冠光寺流柔術本部
私は保江邦夫先生から何を得たか
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   「私は保江邦夫先生から何を得たか」 千秋太郎

私の保江邦夫先生とのご縁については、別の件で連絡があり親しくなった炭粉良三先生との出会い(注1)
から始まった。

保江先生の著書は書店で目にしていたものの過去何十年様々な合気系の武道を体験した結果、私を
納得させるものがなかったこともあり、武術としての合気には興味はなくなった時期であった。

治療の仕事で難しい患者さんが来ていた頃でもあり、炭粉先生との出会いで保江先生の武術ではなく
人を癒す愛魂について興味を持ち実物に会いに行った。
しかし、この時はまだ内心では半信半疑で「もし人心を惑わす怪しい人物ならば、その場でぶん殴って
やろう!」とも考えていた。
(幸い保江先生は武術家以上に細かい配慮の人でそういうことは起きなかった)

私の保江先生への見方が変わったのは3度目にお会いした時で、たまたま別の用事で東京に行った時に
友人である美保神伝合気師範の佐川英二さんに電話したところ保江先生と同じホテルに泊まっていると
いう流れで私も朝食をご一緒にすることになった。
この時のさりげない所作と身体を間近で見て「ああ、病気をされたと聞いていたので見逃していたけど、
この人は過去に武術の鍛錬を相当にされた先生なんだ」ということがわかった。

それまでに何人かの高弟とされる先生とお会いして、「保江先生は摩訶不思議なことが出来るけど、
身体や技術の練度とは別」という先入観を持ってしまっていたが、これが大間違いだと気づき「愛を
中心にした心法が大事なのは当然として、保江先生と同質の身体を手に入れないと現象に大きな差が
出る」とこれ以降考えるようになった。

保江先生のさり気なく簡単に行っているように見える技は、実際には武術をかなり修行した人でも中々
できないものが多い。

保江先生ご自身は、自らが得た様々な発見を皆に共有できるように噛み砕いて説明されることに尽力
されているが、習ってみると先生と同じ空間にいる時のみ現象が起こり一人に戻ると消えてしまうことがある。
元々の血筋や学者としての実績をみても、常人では真似のできない集中力を持った人が行っている技で
あることを習う側が抑えておかなければならないだろう。

あとは、気の感応、イメージや瞑想などの心的作用、皮膚接触を中心とした反射などの方法論は過去に
飽きるほど見てきたのもあり、それ以外の要素である"神の器"ともいえる保江先生独特の浮き身の姿勢を、
保江先生のアドバイスを元に保江先生と身体の質が似ている佐川さん達と研究したので、現在止まっている
ミッションとともにいつか表に出る日があるかもしれない。

とはいえ、個人的には長年修行して愛着もある下丹田を中心とした鍛錬方法とは真逆で、根本から変える
のには時間もかかり現在も相当苦労している。
(常に先を行く保江先生の今後の動きによっては、この新しい方法論も捨てる必要が出てくるだろう)

年末のエスタニスラウ神父の活人術を復元された技を学べたことも良かった。
この時は何故かたまたまギックリ腰になって痛みで腰に力が入らず、捨身技の効能というか神様に
預けるように我を捨てることで生まれる力を実感できた。

武術のことばかり長々書いてしまい一番大事な愛の話から遠のいてしまった気がするが、私にとって最も
重要な思い出といえば、佐川さんの計らいもあり保江先生の運転でサムハラ神社の奥の院に連れて行って
いただいた時の話になる。

ほぼ一日中、私からするとかなり突っ込んだ話をしたのだが、オカルト的な不思議なことが大好きである反面
科学者としての冷徹で厳しい視点をお持ちになることもわかったし、根本である神とつながることなど、
直ぐには体現できないまでも私の今後の人生の指針となることを多く教えられたことは感謝以外にない。


ありがとうございました。


注1:私と炭粉先生の話は「続 謎の空手・氣空術 (バウンダリー叢書)」に出てくる。
本の構成上多少話の変更や脚色がされているのだが、私本人ではなく千秋太郎という匿名での登場ということで了承した。 しかし、この本では脇役である炭粉先生の実際のエピソードの方が面白いと思っている。

                                   (2017/ 4/20)