冠光寺流柔術本部
私は保江邦夫先生から何を得たか
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   『武術奥義への扉 ―私は保江邦夫先生から何を得たか―』

                      炭粉 良三

 「炭粉さんは保江先生の筆頭弟子ですよね。一体どれくらい保江先生から教えを受けたのですか?

 さぞかし多くの事を学ばれたと思いますが…」

 私がよく受ける質問です。

 そしてその度ごとに、私は答えます。

 「私が保江先生から稽古をつけて頂いた時間はね、合計でもたった10分に満たない。

 それ以外、教えを受け事もありません。つまり、私は筆頭弟子なんかでは決してありません」

 事実です。今から9年前の1月、私は(クリスチャンでもないのに)イエス・キリストが「私が合気を教えて

 あげよう」と語りかける不思議な夢を見て、その日の内に本屋で「キリストの活人術」と謳った保江邦夫著

 「合気開眼」(海鳴社)を見つけ、思わず手に取ってページを開けば…今ではすっかり有名になった、

 相手を立たせてしまう冠光寺式合気上げの連続写真が目に飛び込んで来たのです。

 「これは…のっぴきならない事が起こっているか、或いは真っ赤なウソだ!」と思いました。

 そして同年3月、これ又今ではフィギュアスケートの羽生選手が祈願に来て見事金メダルを取った事で

 一躍有名になった、東神戸は御影にある弓弦羽(ユヅルハ)神社にて、私は初めて保江先生とお会いします。

 そしてそこで、その合気上げや突き倒しがウソではない事を知り驚愕します。

 更に同年7月、岡山での保江先生との他流試合にて合気が自由組手にも有効性を持つ事が判り、

 愕然とさせられるのです。

 但し、弓弦羽神社での出来事や7本に及ぶ他流試合の時間の合計は…そう!10分にも満たないのです!

 そして保江先生と私の関係は、それ以上でもそれ以下でもありません。


 それなのに、その後起こった事も含め、私はいわゆる合気シリーズと呼ばれる本を5冊も書いたのです。

 その、僅か10分にも満たない時間。

 しかしその間に…私は、保江先生の身体と自分の身体を通して、恐らく何万ビットにも及ぶ「情報」を

 受け取ったのです。

 30年以上もの間、筋トレに明け暮れてドツキ合い・蹴り合いを続けて来た私が、です。

 「こんな不可解な事が、実際に起こるのか…」

 そう!起こるのです!

 そしてそれを知ってしまったが最後、では一体どうしてそんなバカな事が起こるのか?カラクリは何なのか?

 それを必死に考え、稽古する日々が続く事になります。

 そして遂に「零式」という概念に至り、私はあの他流試合にて保江先生が使ったであろうと同じ技が、組手で

 使えるようになったのです。

 保江先生と初めてお会いしてから、6年かかりました。

 それまでの事は全て隠さず自著に書いて来た通りであり、そしてそれが、私が保江先生から得た事になる訳です。

 しかし…

 使えるようになって、初めて判った事もあります。

 その中で最も大きな気づきは、「合気には階段がある」という事です。つまり、合気にはレベルがあるのです。

 今の私のレベルでは、合気の技が効かない相手が存在します。

 そしてそれは興味深い事に、零式を治療に使った時の成功率である6割と、ほぼ一致するのです。

 更に深いレベルがあるのです、恐らく。

 そういった意味で、保江先生が私に教えて下さった事とは、武術の奥義が紛れもなく存在している事と、

 そしてその奥義自体にもレベルがあるという事になります。

 まさに、武術奥義への扉。

 更に、私が悪戦苦闘している間にも、実に多くの武道家や格闘家が保江先生の稽古などに参加されています。

 空手の拳友会・畑村洋数会長は冠光寺流の影響下で氣空術を完成させた事は有名ですし、その氣空術の稽古に、

 世界に門弟800万人を持つ空手家・銘苅拳一先生や、長く欧州で柔術を稽古され指導されて来た逆手道・

 倉部誠先生が参加されています。

 合気道眞伝会の木下淳人会長も冠光寺流を学ばれました。又、空手道真義舘・麻山慎悟館長は保江先生から

 免許皆伝を授かられたとの事です。

 これらの方々は既にそれぞれの道で、御自分の武道観を確立された方々だと言えます。

 そんな方々が冠光寺流の保江邦夫という人物から何を得たか。「愛魂」という概念が彼ら一流の武道家によって

 様々に受け継がれてゆく事に、私は陰ながら大変嬉しく思っております。

                                               (2017/ 3/ 8)


 ※炭粉良三著の”合気シリーズ”(5冊)についてはこちらをご覧下さい

 また炭粉さんは現在、次作『合気繚乱』(海鳴社)の執筆準備中です。